「人生の最期」をどう支えるか ─特別養護老人ホームとの新たな連携─    

  • 2025.06.17

特別養護老人ホームとは?

「特養(とくよう)」の名前で知られるこの施設は、日常生活に手厚い介護が必要な高齢の方が暮らす場所です。
「最期までこの場所で暮らしたい」とのお考えから、まさに“終の住処(ついのすみか)”として選ばれる入居者の方も多くいらっしゃいます。

ある施設からのご相談

ある日、特養の職員の方から「看取り」に関するご相談をいただきました。

ー「自然なかたちで人生の最期を迎えたい」と願う入居者やご家族が少なからずいらっしゃる。しかし、施設所属の医師がいつでも対応できるわけではなく、容態が急変すれば救急車を呼ばざるを得ないー

そんな現状に、スタッフの方々も悩まれていました。
そこで、24時間体制で在宅医療を行っている当院に声をかけてくださったのです。

特養には訪問診療ができない

実は、特養は他の高齢者施設と異なり、原則として外部の医師による訪問診療が認められていません(ごく一部に例外あり)。
通常は施設所属の医師が対応しますが、その体制が十分とは限らないのが現実です。

結果として、入居者本人やご家族の望む「穏やかな最期」が叶いにくくなっているケースも少なからずあります。

救命の現場で感じたこと

私が救命救急センターに勤務していた頃、特養入居者の方を救急外来で受け入れることもよくありました。

命を救うための最前線ではありましたが、「本当にこの方にとって、これが最良だったのか」と迷う場面もありました。
時には、最期の時間を見知らぬ病院のベッドで迎える方もいらっしゃいました。

もちろん、救急医療が必要なときには搬送が最善の選択です。
しかし、「搬送しない」ことで、本人とご家族が納得し、心穏やかに最期を迎えられることもあります。

そんな経験を経て、たとえ制度上の制約があっても、「その人に寄り添う医療」を実現したいと考えるようになりました。

今、できること

この6月から、私たちはその特養と連携を開始しました。
制度の枠を越えてでも、施設の方々とともに「その人らしい人生」を支え、穏やかな日々を守れるよう力を尽くしてまいります。

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